さよなら、アドルフ (2012):映画短評
さよなら、アドルフ (2012)アイデンティティーを強制的に喪失させられることの悲劇
父親がナチ親衛隊の高官だった14歳の少女が、敗戦後、性急に大人になることを強いられる過程はあまりにも過酷だ。自己の意思決定に責任を持つべき大人たちの戦争責任は別問題として、この年齢の子供が、一方的な外的要因によりアイデンティティーを崩壊させられることの悲劇。同時に、現実を知った彼女が自身を罰するかのように内側から自己を破壊していくことの痛々しさに言葉を失う。
戦勝国側か敗戦国側かに関わらず、あらゆる価値観が覆され、自身のルーツを否定され、自己の存在に疑問を抱きながら生きる苦しみとはいかばかりであろうか。今もどこかで起きている人々の苦難を思わずにはいられない。
この短評にはネタバレを含んでいます