マダム・イン・ニューヨーク (2012):映画短評
マダム・イン・ニューヨーク (2012)ライター3人の平均評価: 4
これもまた多様性を増す今のボリウッド映画なのだ!
なんてったってシュリデヴィさま! 父権主義と言語差別の中で存在意義を見失った知識層インド家庭の主婦をリアルに演じつつも、容姿のみならず一挙一動の美しさが圧倒的、15年のブランクを感じさせない。英語教室での他民族級友との交流は『幸せの教室』あたりを想わせるが、ラストのスピーチなどかなり辛辣で、ミーラー・ナーイルの影響も感じさせるこの新人女性監督のヤる気が伺える。歌って踊るインド娯楽映画ではないが(でも結婚式では流石にね!)ニューウェイヴ・ポップぽい音楽も爽やか。そしてインド映画ファン最高のお土産はA.バッチャンのカメオ、機内で『ミッション:8ミニッツ』のひとりヒンディー語吹替を熱演してくれます。
女性蔑視の中…インド母ちゃんの反乱!
女性の社会進出が当たり前となった今でも、女は家庭に入ってろ!みたいな古臭い考えの男たちがいる。とりわけインドは女性差別事件がしばし賑わすように、因習に縛られている女性は多い。だが、新鋭女性監督が彼女たちを解放した。夫はもちろん、家族で唯一英語が出来ない事で子供にも軽視されていた専業主婦が、N.Y.の語学学校でアイデンティティーを取り戻す。同様の立場にいる女性たちに、希望の光を与える応援歌だ。
個人的に夜間大学卒なので共鳴しまくりだ。同級生には本作のヒロインぐらいの人たちがごろごろいて、若造の筆者にとっても本当に刺激になった。学ぶ事に年齢制限はないという本作のメッセージも素敵じゃないか。
端的にいうと「なんか最近やる気ない」って人に超おすすめ!
マダムは新旧の隙間に挟まれた世代のインド女性。家族で自分だけ英語を喋れない……これはグローバル化が進めば日本でもよくある恐怖の事態になるのかも(西原理恵子の『家族の悪知恵』に似たお悩み相談が)。そこで本作が差し出す提案は「イジけてないで現状打破あるのみ」という素直な実践主義。この明快さが痛快!
むろん真の目的は英語習得より、人生を活気づけ自信と尊厳を獲得すること。印社会の軋みを踏まえたエリーティズム批判は『きっと、うまくいく』に通じるが、こっちは時代に翻弄される保守層の等身大に合わせた目線の低さが魅力だ。恋愛担当にフランス男を投入するベタさも微笑ましく、『雨の朝巴里に死す』のチョイスも絶妙!