GF*BF (2012):映画短評
GF*BF (2012)ライター3人の平均評価: 4.7
青春の輝きと、大人になることの窮屈さ
P・チャン監督『ラヴソング』(96)の台湾版といった趣。あちらは中国返還期の香港を背景に男女の愛を描いたが、こちらは厳戒令下の台湾。しかも男女3人というのが現代的だ。激動の日々の中、すれ違う恋模様。彼らの眩しい青春にときめいてしまうのだが、社会人になったエピソードから途端にトーンダウン。それは同じ台湾の青春映画『あの頃、君を追いかけた』でも感じた事なのだが、ようやくその理由が判明。実際、大人になるとつまらなくなるんだからしゃーないかと。
それにしても中国共産主義に抵抗する学生たちの姿は、先頃の立法院を占拠した学生たちの姿を重なる。脈々と受け継がれてきた闘いの歴史に台湾人の気概を見た。
水のないプールに甦る藍色。
こと青春映画に関しては、台湾はいま世界一のレベルだろう。キュートな俳優陣や、ノスタルジックで胸キュンものの甘さだけでなく、ジェンダーの問題や時代背景を精緻に絡める社会性の強さが作品を骨太にしているからだが、これはお手本ともいえる出来。戒厳令下の学内でダンス暴動を決行した’85年。民主化を求める学生運動に身を投じた’90年。同性婚さえおおっぴらになった時代に不倫愛に身悶える’97年、そして現在…。一人の女性(『藍色夏恋』等の知性派美女グイ・ルンメイ!)とふたりの男性という鉄壁のラブトライアングル(勿論それぞれの本命は食い違っているのだ)が激動期の台湾そのものを体現し、全身全霊で駆け抜けるのだ。
変わりゆく社会で唯一変わらなかったのは?
戒厳令下にあった80年代に瑞々しい高校生だった男女3人が時代のうねりのなかで大人へと成長していく姿をまぶしく見つめてしまったのは、私が同世代だからかも。複雑な三角関係を互いに察知しているからこそ熱い思いを言葉にできない主人公たちの心中が非常に切なく、見ていて「その痛みわかる」となること必至。ゲイ青年を演じたジョセフ・チャンとそんな彼を愛してしまったヒロイン役グン・ルンメイの視線演技が特に素晴らしく、報われない愛の辛さを思い知らされる。急激な変化を遂げた台湾社会とずっと変わらない愛情を比較させる演出も巧みで、ヤン・ヤーチェ監督が書いた原作小説も読みたくなった。