ダバング 大胆不敵 (2010):映画短評
ダバング 大胆不敵 (2010)ライター2人の平均評価: 3.5
アンチヒーローの姿勢は崩さず、なんだけど。
ひと昔前は甘い二枚目マッチョ、もはやコワモテマッチョなイメージが強いサルマン・カーンの、いわばゴキブリ刑事もの。ま、そこはボリウッドだから卑屈な腹違いの弟への非情な行為(演じるはサルマンの実弟で本作プロデューサー)にも赦しが用意されているのだが、全編完全な俺様映画になっていて、いっそ天晴。リアリティ皆無なアクションシーン、男根部を強調するように「フルフルダバンダバンダバンダバン」とズボンのベルトをクイクイする下品な振付(ま、ありがちだが)もどんとこい、である。でもこの監督、ヒンディー語映画ニューウェイヴの旗頭アヌラーグ (『デーヴD』等が映画祭上映済)の弟なんだってね。家族でバランス感覚抜群。
ボリウッド印の特濃バイオレンスムービー
まずは“毒を持って毒を制す”暴力警部ダバングの傍若無人なこと!悪党から奪った金で私腹を肥やすわ、報告書や事件の捏造は朝飯前だわ。でも、正義と弱者の味方だから全部チャラなんだよね(笑)。しかも歌って踊れてダンディな男前で、超人的な運動神経の持ち主。しまいにゃ、怒りで筋肉が膨張して上着が吹っ飛ぶ。お前はハルクか!と突っ込みたくなる迷シーン。
リアリズム完全無視の超絶アクション、インド映画ならではの過剰にドラマチックな演出。そして、根強い家父長制度や血縁の因習、権力の汚職などに起因する愛憎ドラマ。ミュージカル・シーンはちょっと地味だが、ボリウッドでしかあり得ない特濃バイオレンス映画だ。