バクマン。 (2014):映画短評
バクマン。 (2014)ライター3人の平均評価: 5
漫画原作を躍動感あふれる映画に換えた省略・誇張・変形が秀逸。
エッセンスを凝縮させジャンプ世代への愛に満ちあふれた脚本が素晴らしい。キャラクターやエピソードの整理、独自の味つけ、2時間でカタルシスを与える構成――。編集部vs漫画家/漫画家vs漫画家を主軸に「友情・努力・勝利」をテーマとし、挫折を経て上昇する者たちの切磋琢磨がまぶしい。決して多くを語らず、今が旬の配役でキャラの個性を表わし、CGバトルとプロジェクションマッピングによって作り手の内的世界への想像力をバクハツさせる。手塚治虫が唱えた漫画絵における基本要素「省略・誇張・変形」は、映画の実写リアルにおいても重要だ。思春期にこの青春映画を観てしまえば、世の異端児はみなクリエイターを志すだろう。
サイコーと満賀道雄、ジャンプとトキワ荘が重なる時
『まんが道』未体験世代は、きっとこの傑作映画が興味の入り口になるだろう。監督・大根仁は『バクマン。』の原作が裏に備えていたマンガ総体の体系と歴史を可視化した。こうしてまた時代を超え、文化のバトンが受け渡される。
ぎゅうぎゅうに詰めこまれた情報量から言うとマニアックな作りとも言えるが、ジャンプ・システムを背景に青少年のための「自己実現」を説いた成長物語としては、まさしく“少年マンガ”的に平易だ。恋と仕事。現実の厳しさ。そう考えると成分は『モテキ』とやはり同じ。
役者は「いい男」ぞろい。天才キャラを地で行く新妻エイジ役の染谷将太の凄さに改めて震撼。そして「哀愁」担当の宮藤官九郎、泣ける!
“漫画家版『ピンポン』”できました!
プロジェクションマッピングなど、最新鋭CGを駆使したバトルシーンに、エレクトロなサカナクションの音楽&主題歌、さらにクドカンの投入…。作り手が狙ったのは、明らかに“漫画家版『ピンポン』”であり、大根監督の原作エピソードの抽出の巧さ、スピード感ある演出も相まって、しっかり狙い通りの熱い青春映画に仕上がった。しかも、漫画愛に溢れたエンドロールでお腹いっぱい。ぶっちゃけ、それで満足だし、『モテキ』同様、その年を代表する日本映画であることに間違いない。ただ、熱狂的な原作ファンには、やはりサイコー=神木、シュージン=佐藤のキャスティングがベストであり、キャラの掘り下げ方に甘さを感じてしまうかもしれない。