美しいひと (2013):映画短評
美しいひと (2013)原爆の悲劇は日本人だけのものではない
原爆をテーマにすると、日本人の悲劇として描かれがちだ。しかし本作は在日朝鮮人や長崎俘虜収容所にいた元オランダ兵にもカメラを向ける。母国で後遺症と差別に苦しんだであろう彼らが、日本から来た監督に恨み事の1つも言ってもおかしくない。だが彼らはむしろ、日本を懐かしむかのように東志津監督を受け入れて当時の状況を語る。彼らが、日本政府の戦後補償を受けている実態も興味深い。
東監督はいわゆる戦争を知らない世代だ。だが前作では中国残留婦人を取り上げ、歴史を記録することに果敢に取り組んでいる。戦争体験者は高齢となり語り部の減少が叫ばれているが、本作のような作品が誕生したことにわずかな希望を見るかのようだ。
この短評にはネタバレを含んでいます