バードシャー テルグの皇帝 (2013):映画短評
バードシャー テルグの皇帝 (2013)ライター2人の平均評価: 4.5
エンターテインメントのカオス、ここに極まれり!
冒頭からワイヤーワーク炸裂の超絶アクションに度肝を抜かれ、たたみかけるようにコメディ、ロマンス、ミュージカル、サスペンス、社会派ドラマが入り乱れるエンターテインメントのカオスへと引きずり込まれる。荒唐無稽は当たり前なインド映画だが、このハイテンションで2時間38分を一気に見せ切ってしまうのは凄い。
主演のNTRジュニアはお世辞にもイケメンとは呼べないが、その身体能力の高さは特筆もの。ハイパースピードのキレッキレなダンスは圧巻だし、超人的な肉弾スタントも惚れ惚れするほど。ヨーロッパロケの豊かな国際色も見どころ。しまいにはハリウッド映画のパロディまで登場するのだから、もうお腹いっぱいだ。
インド映画を観慣れた者でも唖然となる超高速&無節操さ。
スクリーンで観てるのに「これ二倍速?」と錯覚させるほど常軌を逸したスピードでぶっちぎる170分。物語の全体像が判明するのは130分も経ってから。物語は何度も脇に逸れ、主筋を見失うこと数度。最後まで黒社会ものなのかラブコメなのかドタバタなのかも判然とせぬ、その異様さを観るだけでも価値がある。正直勢いだけの作劇だが、それでも退屈もさせず見せきっちまうんだから大したものだ。後半ほぼ準主役と化す警察長官の義弟とか、かなりトラッシュなホラー映画監督とか、脇役もかなりヘン。主演スターの祖父でありテルグ語映画の革新者NTRへのリスペクトも頻出するが、その歴史を知らぬ僕でも映画人の愛が感じ取れて微笑ましい。