水の声を聞く (2014):映画短評
水の声を聞く (2014)「アホ」ではなく「ガチ」で煩悩と聖性に向き合った山本政志!
鬼才・山本政志が『恋の渦』のプロデューサーとして荒稼ぎしたカネを自分の監督作に注ぎ込んだ問題の一本だが(笑)、えっらい真面目な映画で驚愕した。
物語はビジネス目的でインチキ新興宗教を設立した在日韓国人のヒロインの変化を描くもの。偽物と本物が皮肉に転倒する救済システムの現実を通して、民衆の「欲望の構造」を明晰に描く。その先にベルイマンの『処女の泉』を連想させるイメージを用意している。
煩悩まみれの薄汚れた世俗の中で、いかに「聖性」は立ち上がるか――との考察は山本作品の根幹にある主題だと思うが、今回は直接スピリチュアリズムに取り組み「ガチ感」が強い。幻の未完作『熊楠』への想いも掻き立てられる。
この短評にはネタバレを含んでいます