ローリング (2015):映画短評
ローリング (2015)93分の大傑作――劣情と無常、世間の闇。
エロスにも色んな種類があるが、本作に似合うのは「劣情」か。主軸となるのは過去の盗撮事件が尾を引いた元教師(川瀬陽太)の転落劇。臆病な小市民が、社会性の喪失と共にだらしなくタガが外れて、激安の世界から奈落の底へとらせん状に堕ちていく――。この過程に生々しい悪夢のような吸引力がある。一種の“恐怖映画”とも呼びたい。
監督・冨永昌敬の演出はいよいよ脂が乗り、「やんちゃ」と「成熟」が折り重なっている。準・二焦点と言える特殊な作劇の妙や、匂い立つ男優女優の魅力。ソーラーパネルにまつわる時事性を取り入れつつ、荒涼とした無常が漂う後味も抜群。もし増村保造や川島雄三がコレを観たら激賞するのではないか?
この短評にはネタバレを含んでいます