黄金のアデーレ 名画の帰還 (2015):映画短評
黄金のアデーレ 名画の帰還 (2015)戦争に奪われた人生と尊厳のために立ち上がった老女のガッツに拍
「接吻」や「ダナエ」と並ぶクリムトの代表作をめぐる訴訟を描いた実話ドラマだが、単なる裁判ものではない。もちろんダビデvsゴリアテな法廷闘争もスリリングだが、見どころは戦後補償をめぐる当事者たちの複雑な思いだ。叔母の肖像画の所有権を求めた老女マリアの心情が千々に乱れ、弁護士ランディは訴訟を機にユダヤ人としてのアイデンティティに覚醒するあたりは実にドラマティック。また親世代が犯した過ちに時効はないとマリアを支援するオーストリア人ジャーナリストの存在が正義を際立たせる。出番は少ないがダニエル・ブリュールがいい仕事してる。それにしても驚いたのが、個人で国家を訴えられるアメリカの法律。さすが訴訟大国!?
この短評にはネタバレを含んでいます