パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト (2014):映画短評
パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト (2014)ライター2人の平均評価: 4.5
フラメンコ・ギタリストの革命家は野武士のごとし
監督は、パコの長男。
ともすると父の部分が強調され、個人的な作品になりがちだ。
だが、ひたすら自分の音楽を追究した野武士のような人生と、フラメンコにどのような革命を起こしたかを客観的に描いており、貴重な音楽史になっている。
フラメンコですっかりお馴染みのカホン(四角い箱)も、後進のビセンテ・アミーゴがスティングとコラボするような下地を作ったのも、パコだったとは。
一方で、伝統を崩して批判を浴び、即興演奏が出来ずに苦悩したことを吐露する貴重なインタビューも。
2014年に66歳でこの世を去ったが、晩年も変わらぬ超絶テクを披露している演奏シーンを見るにつけ、早過ぎる死を惜しまずはいられない。
悶絶! ビギナーでもハマる事、身を持って証明(笑)
フラメンコには全く無知な筆者だが、実はこの映画を観てからパコ・デ・ルシアのにわかファン。急に音源を揃え始めている。超絶テクの速弾きから醸し出される官能性に加え、やはり本人の魅力が大きかった。求道者としての謙虚な姿勢、男の色気……これは惚れずにいられない。
特に惹かれたのは伝統的な枠組みから果敢にはみ出して、ジャズ/フュージョンに接近していく辺り。批判や孤立を恐れずに、自らの探究心と好奇心に従って他流試合を推し進めた姿勢はディランやマイルスと同じ革新者の孤高美を感じる。また彼がギターを始めたのは父親からの影響だが、このドキュメンタリーの監督がパコの息子だという魂のバトンリレーも眩しい!