知らない町 (2013):映画短評
知らない町 (2013)人間の深層に降りようとした異色作として一見に値する。
長編3作目となる大内伸悟監督の風変わりな意欲作だ。死者=生の跡を歩くことで、何の変哲もない風景が意味を持って立ち上がってくる様は大島渚の『東京戦争戦後秘話』等と重なるし、ホラー的着想で存在不安の根本を揺さぶる点では篠崎誠の怪傑作『SHARING』と並べてもいい。
とはいえ本作の魅力の肝は、それこそ♪知らない町を歩いてみたい~と歌われる「遠くへ行きたい」に通じるような、人間の潜在意識に訴えかけるノスタルジックかつ奇妙な抒情だろう。少年の頃の回想(記憶)パートが抜群。惜しいのは語りにやや明瞭さが欠けること。後半の仕掛けに向けて異形の構築美を打ち出せていたら、達成のレベルが随分変わったに違いない。
この短評にはネタバレを含んでいます