名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN:映画短評
名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN青春ムービーの愛おしいたたずまい
カリスマミュージシャンの映画は、トップの地位に立つ劇的な瞬間を描くのが常套だが、本作はちょっと違ったアプローチ。一人の青年が自身の音楽と向き合い、その年齢ならではの恋愛関係に身を任せ、内面的な変化と向き合う…とシンプルな「青春映画」の様相。映画全体、音楽が奏でられるような心地よい流れで演出され、飽きさせない。
もちろんボブ・ディランの曲の魅力はたっぷり投入。それをティモシー・シャラメは自身の歌声で哀切に表現し、キャラクターとしても過去の作品とまったく違う演技でこなし、稀有な才能を再認識させる。
後に伝説となる人物の「原点」を体感する意味で理想型。やや長尺も、観終わった後の清々しさ、この上ない。
この短評にはネタバレを含んでいます