忍びの国 (2017):映画短評
忍びの国 (2017)ライター2人の平均評価: 3
跳躍し撹乱する斬新な活劇に対し、愛の尊さを知るドラマが弱い
原作の怠け者という設定より、無気力無感動に映る大野智だが、いざ戦闘モードになれば、その生身のアクションは目覚ましい。軽やかに跳躍し、踊るように撹乱し、リズミカルにかわす。殺陣というよりも、いわば振付だが、魅せるパルクールと荒ぶる格闘技の融合は斬新だ。ただし、視覚効果を駆使したシーンになると、途端に決め画に乏しくなる。敵と味方が判然としない混沌とした乱世。殺戮へのこだわりという原作箇所の省略と徹底した軽さで語る話法は正解だが、己の欲得にのみ生きる“人でなし”が、大義や愛の尊さを知るまでの肝心のドラマは、しっかりと掘り下げて構築すべきだった。
大野くん、どハマリ。
何考えてるか分からない、一筋縄ではいかない主人公・無門のキャラは、飄々とした大野智に、どハマリだ。しかも、持ち前の身体能力とバルクールなどのアクロバット、ジークンドーやカリなどの格闘術をミックスした吉田浩之によるアクションとの相性も良い。ファンならずとも目を見張るほどの仕上がりで、岡田准一とのバトルも観たくなるほどだ。もちろん『映画 怪物くん』の惨劇ふたたび、にはなっておらず、時代劇に偏見を持つ層には興味深く映るだろう。個人的には『シンゴジ』の「竹尾でーす」こと、小松利昌との絡みも嬉しいが、俳優部の芝居のテンションの差異やCGシーンとのバランスが、ドラマとしての詰めの甘さに繋がった感もある。