われらが背きし者 (2016):映画短評
われらが背きし者 (2016)ライター2人の平均評価: 3.5
ロシアン・マフィアはどこまでも追いかけてくる
ごく平凡な大学教授夫婦が、休暇の旅先でロシアン・マフィアの内部告発者と親しくなり、彼とその家族のイギリス亡命を手引きするためMI6に協力せねばならなくなる。
なにしろ原作はジョン・ル・カレだし、地味で激シブなスパイ映画かと思ったら、意外にもなかなかスリリングでサスペンスフル。お人好しの主人公が強引なロシア人のペースに巻き込まれていく危うさはヒヤヒヤものだし、相手が本気で助けを求めているのか、それとも何か裏があるのか分からない点も絶妙な緊張感を引っ張る。
そして、命の重さと情報の価値を天秤にかける冷淡なMI6。自国民じゃないから仕方ないとはいえ、組織や権力の非情な論理を思い知らされる。
心優しき一般人がロシア人マフィアの亡命をサポート!
マラケッシュで休暇中の夫妻が旅先で知り合ったロシア人マフィアの家族に同情し、亡命劇を牽引する設定はやや強引かも。ただし夫役ユアン・マクレガーがいい人オーラ全開なので「これはアリ!」となるし、亡命を求める背景も現実感たっぷり。冒頭のショッキングな展開で今のロシアの闇を見せる演出もとても効果的だ。ただし最後に彼らを待ち受けるトラブルが韓流ドラマというか『ロミオトジュリエット』というか、サスペンスに不似合いな展開で一瞬びっくり。MI6諜報員が事情を複雑にするあたりがジョン・ル・カレらしさだし、演じるダミアン・ルイスは常に損得勘定しているようなダメな感じが漂っていて素晴らしい。