奇蹟がくれた数式 (2016):映画短評
奇蹟がくれた数式 (2016)ライター2人の平均評価: 3.5
実録映画にあって欲しい丁寧さが備わった秀作
どの分野にも天才はいるが、実話に基づく本作を見ると主人公ラマヌジャンが、類まれな数学の才能を持っていたことが、本作を見るとよくわかる。証明なしに数式を生み出す、まさに奇跡。
しかし数学学会は証明を求める。本作のドラマの核は、それを手助けする英国人教授と、インドから渡英したラマヌジャンの交流。数式との格闘のみならず、彼らの間には国境の違いとの格闘も存在する。その流れを丁寧に見据えている点がいい。
英国名門大学のエリート意識の高さがうかがえる点も興味深く、それに行く手をさえぎられるラマヌジャンの苦闘がドラマを盛り立てる。マシュー・ブラウン監督はこれが長編2作目だが、今後も注目したい。
天才的な閃きと宗教を結びつけなくてもよかったかな。
スパコン並みの数学力を持った天才ラマヌジャンがイギリスで味わった苦悩と喜びを描いた実話で、数学が苦手な身には「ほほぅ」が詰まった物語。コミュ障な指導教官と心を通わせる展開や故郷に残した母と嫁の確執に心揺さぶられる一方で、「おおっ」と思うのが数学者のマニアックさ。寝食を忘れて証明に没頭したり、数式の真偽を明らかにするために延々と計算を続けたり、または1729なんて数字にさまざまな意味を見出したり。せこい学閥意識や人種差別、戦渦と食糧難に苦しむラマヌジャンの心を癒してくれるのも数式!? ただし彼が神懸かり的な閃きで数字と対峙するシーンには違和感あり。神様は数学とは無関係だと思うよ。