ちょっと今から仕事やめてくる (2017):映画短評
ちょっと今から仕事やめてくる (2017)ライター2人の平均評価: 2.5
悪しき企業風土に追い詰められた若者に希望を示そうという意志
昭和にはせいぜいグレーでしかなかった企業が、ブラックと呼ばれる現代。若者のメンタルにとって、本作が描くテーマは喫緊の課題だ。上司吉田鋼太郎に従属する部下黒木華の関係性に、今なお続くこの国の悪しき企業風土が象徴されている。どうにも逃げ場がなくなった主人公の前に現れる、謎めいた存在ヤマモト。彼をめぐるミステリーやミスリードが、テーマをぼやけさせてしまうのが惜しい。希望を示す終盤の展開は飛躍しすぎ、ファンタジーと化していく。映画そのものがヤマモトを志向するのなら、万人にとっての処方箋を描くべきだった。映画としては弱い。しかし、追い詰められた今の若者を救いたいという意志は伝わってくる。
監督のドS演出は違う意味で必見!?
関西弁をまくしたてる、謎めいたチャラ男キャラを演じる福士蒼汰は、確かに魅力的である。だが、彼に振り回される主人公の新入社員を工藤阿須加が「家売るオンナ」の延長線上で演じるのは、ちょっと違う感がある。ただでさえ薄っぺらい原作がさらに薄く見えるだけで、2時間の尺が持たないのだ。いくら吉田鋼太郎がイッたパワハラ上司を、黒木華が裏の顔しか見えない先輩を怪演しようとも、目立つのは成島出監督のドS演出ばかり。そのため、肝となる“いい大人が鞄を振り回して、横断歩道を疾走する”シーンさえ、苦笑で終わってしまった。しかも、ネタバレシーンが長すぎて、完全に某国の観光映画に見えてしまうのはいかがなものか?