関ヶ原 (2017):映画短評
関ヶ原 (2017)ライター2人の平均評価: 3
見応え十分だが、難点は役者の演技を堪能させない編集の速度
若者向けにライトに変換した昨今の時代劇とは異なり、黒澤映画の薫陶を受けつつも現代感覚を採り入れた歴史群像劇の王道として見応え十分。岡田准一は面構えも立ち居振る舞いも、すっかり侍になってきた。しかし義に忠実な漢である岡田三成は、鬼気迫る滝藤賢一=秀吉の前で影が薄く、敵対する老獪な役所広司=家康の前で見るからに呑まれている。最大の難点は、編集の速度がスピーディを超え、雑に感じてしまうこと。『シン・ゴジラ』では表情を記号的に扱い、破局へ向けた切迫感を醸成したが、本作では、せっかくの役者陣の演技を堪能できないというフラストレーションが溜まっていく。編集と録音を修正したVer.でじっくり観てみたい。
『忍びの国』に続き、時代劇離れの若年層を惹きつける
司馬遼太郎による原作オリジナルのキャラ・初芽など、脚色部分がかなり目立つこともあり、熱狂的な原作ファンは嫌悪感を示すかもしれないが、石田三成と島左近の友情物語、三成と初芽の恋愛物語を軸に観れば、これはこれでアリだろう。そして、ドラマ版の加藤剛ばりに堂々たる貫禄を魅せる岡田准一。豊臣家に強い忠誠心を持つ、正義感溢れる男として描かれる三成にはピッタリだ。また、いかにも原田眞人監督作らしいスピーディなセリフ回しと編集で、「1600年9月15日」に向け、突き進んでいく感覚も悪くない。とにかくエンタメに徹した作りであり、『忍びの国』に続いて、時代劇離れの若年層を惹きつける魅力は十分にあるといえるだろう。