王様のためのホログラム (2016):映画短評
王様のためのホログラム (2016)ライター2人の平均評価: 3
タイムリーなネタの下、トム・ハンクスが真骨頂を発揮
同じデイヴ・エガーズ原作だけに、マット・デイモンがペンシルヴェニアの農民相手に悪戦苦闘した『プロミスト・ランド』との共通点が多い本作。とはいえ、最初は戸惑いばかりのイスラム文化を軸にしたハートウォーミングな展開、後半から一気に強まるラブ要素、さらにトム・ハンクスがドッキリばりにイスから転げ落ちるコミカル要素など、『砂漠でサーモン・フィッシング』の感触に近い。地味な印象は否定できないが、悪夢のシーンなど、いかにもトム・ティクヴァ監督なカットもあるほか、美味しい役回りで常連ベン・ウィショーも登場。タイムリーなネタと真骨頂を発揮するハンクスの融合を楽しむには問題ありません。
異文化が"シュールな光景"の形で出現
どこまでも広がる青空の下、何もない黄色い砂漠の真ん中に、巨大な現代的建築物がドーンと立っている。そんな非現実的な光景は、まったくの異文化というものを、目で見てわかる形で出現させたもの。この光景に直面した都会人の主人公が、それまでの価値観や既成概念を捨てざるをえないことに、目で納得がいく。そして、主人公がそれらを捨てた時、彼の目にこの土地が本来持っていた豊かな色彩がどんどん見えて来て、その鮮やかさがスクリーンに広がっていく。
その異文化世界とは対比的に描かれるのが、冒頭の現代アメリカの都市生活。狂騒の日々をオヤジなラップでコミカルに紹介する、トム・ハンクスの芸達者ぶりも見もの。