ユリゴコロ (2017):映画短評
ユリゴコロ (2017)ライター2人の平均評価: 3.5
抵抗感や嫌悪感を覚えつつも共感せずにいられない
いわゆる反社会性パーソナリティ障害の心理に肉薄する作品だ。幼い頃より感情が乏しく、人を殺めることでしか充足感を得られないヒロイン。極端な例ではあるが、演じる吉高由里子の的確な表現力のおかげもあり、抵抗感や嫌悪感を覚えつつもどこか共感せずにはいられない。恐らく、周囲とは違う自分を自覚したことがある人なら尚更だろう。
そんな彼女が初めて愛という感情を知ることで、逆に悲しい運命をたどる。この因果応報のドラマにも罪を背負った人間の哀切が滲む。子供殺しなどショッキングな描写も厭わないハードな演出は実にリアルで見応え十分だ。それだけに、ラストの「運命のいたずら」的な展開は荒唐無稽に思えて惜しまれる。
ラブ&デスノート
熊澤尚人監督が『ここさけ」を挟み、テイストが違う「過去編」「現代編」を撮っているだけに、2本の作品を観てるようなボリューム感。“イヤミス”とはいえ、結局のところラブストーリーである原作も、若干強引さもありながら、巧く脚色している。妙に気合いの入ったリスカや、ポール・バーテルもビックリ!なフライパン殺人など、ショッキングな描写もあるが、とにかく今村圭佑による撮影が際立っており、「過去編」の幻想的な映像美は女性ウケしそうだ。『ヒメアノ~ル』のプロデューサー陣だけに、佐津川愛美の使い方は今回も面白いが、やっぱり吉高! 『横道世之介』に続き、80年代の空気感を醸し出せる稀有な女優と再認識させられた。