フレンチ・ラン (2016):映画短評
フレンチ・ラン (2016)ライター2人の平均評価: 3.5
タイトに魅せるパリ在住、異邦人バディの奔走
お話を耳にして『パリより愛をこめて』を連想したが、ヨーロッパコープ作品のような大味な派手さや大味さはなく、引き締まったつくり。
民衆の怒りをあおる分断政策や、テロなどの現代性を視野に入れていることからも、リアリティを重視しているのは明らか。異国でCIAができること、できないことも踏まえられており、息苦しくない程度に理詰めで攻めてくる点がいい。
ハードボイルドな空気をまとうイドリス・エルバはタフガイらしくかっこいいし、相棒役リチャード・マッデンの憎めない小悪党ぶりも妙味。正義漢&悪党と立場はまったく違えど、ともにパリの異邦人である、そんな両者の絡みにバディムービーの旨みがある。
ヨーロッパ社会の今を色濃く映し出す骨太アクション
爆弾テロの容疑者と間違われたアメリカ人のスリと、ルールに縛られない一匹狼のCIA捜査官がタッグを組み、真犯人を追ってパリの街を駆け巡る。
基本は『48時間』に類似するバディもの刑事アクション。しかし、その背景には移民問題やテロの脅威など混沌とするヨーロッパ社会の今が色濃く映し出され、さらに右派と左派の対立を煽ることで漁夫の利を得ようとする集団を事件の黒幕に据えながら、現実社会の情勢にも強く警鐘を鳴らす骨太なストーリーは悪くない。
それにしても捜査官役イドリス・エルバのカッコいいこと!肉弾スタントも難なくこなしており、噂されるジェームズ・ボンド役も彼ならイケるんじゃないかと感じさせる。