獣道 (2017):映画短評
獣道 (2017)ライター2人の平均評価: 4.5
映画女優・伊藤沙莉、会心の一撃!
どこか園子温らしさが海外でウケてる内田英治監督だが、今回も宗教、ヤンキー、AV、そして純愛など、『愛のむきだし』との共通項が多い。人生を転げ落ちるローリング・ヒロインと化す伊藤沙莉は、子役時代から満島ひかりを超える破壊力を持っていたが、満を持して、映画女優としての会心の一撃を放つ! 完全に役に憑依し、聖女からヤンキー、夜の女まで、そのすべてがコスプレに終わっていないのがスゴい。しかも、青春群像劇としての見応えもあり、まさかハーフ芸人・アントニーには泣かされるとは…。ブラックコメディながら、なぜか清々しいラストも目を見張るものがあり、監督の前作『身体を売ったらサヨウナラ』とは段違いの出来。
地域格差の悲哀をあぶり出す『下衆の愛』的青春ヤンキー映画
『下衆の愛』でインディーズ映画業界の赤裸々な裏側を描いた内田英治監督が、今度は平凡な地方都市のダークな裏側に肉薄する。
経済どん詰まりの狭い地域社会で、新興宗教に走って育児放棄する親、学校にも通わず風俗で働く未成年の娘、生活保護を食い物にするヤクザ、暴行や恐喝を繰り返すヤンキー集団、こんなクソみたいな町から逃れたいと願う若者。
そんな地方都市あるあるをシニカルなユーモアで連打しつつ、その不満のはけ口や自分の居場所を探して暴走&迷走する青春群像を、時に哀しく時に可笑しく、そして時に瑞々しく描く内田監督の愛情溢れる眼差しが胸に滲みる。もはや貫録すら感じる伊藤沙莉の体当たり演技も素晴らしい。