追憶 (2017):映画短評
追憶 (2017)ライター3人の平均評価: 3.7
贖罪し続ける小栗旬のキャラクターに深く感動
重大な決意をした少年3人組が雪降りしきる海岸を走る姿から事件が起きるまでの冒頭、日本海のどんよりとした空模様に少年たちの気持ちが重なる演出が素晴らしい。成長したキャラクターの今を端的に説明するのも巧みだ。惜しいのは岡田が常に眉間にシワを寄せていることで、苦悩の理由が伝わらないのだ。演技が上手い人だけに残念。意外な展開はなく、事件をきっかけに再会した男たちがその来し方に想いを馳せるわけだが、小栗旬演じる田所の生き方には心底感動した。大げさな演技をしない役者だが、全人生をかけた贖罪を当たり前と受け止め、正しく生きようとする男を飄々とした佇まいで演じているのが印象的だ。
背景を昭和にすれば、大時代的な違和感は解消されたのではないか
高倉健と阿吽の呼吸で撮り続けてきた監督とキャメラマンが、腕に覚えがある若者たちで描く。邦画DNAを継承する有意義なプロジェクトだ。悲劇を淡々と見つめる風景というスタイルにブレはない。トラウマを抱えた幼馴染3人の成長後――『ミスティック・リバー』的な構造に想を得るのはいいが、事件の発端や展開があまりにも大時代的。俳優陣に陰りが足りないのではない。カフェバーの時代に生まれた30代を、地方のうらぶれたスナックバーに連れ込んで“イズム”を注入するような無理がある。いっそ背景を昭和中期にすれば違和感は解消されたのではないか。99分で収束させるためとしか思えない「真犯人」にも納得がいかない。
いろんな意味で、今の日本映画界に一石を投じる
「火サス」も「土曜ワイド」も過去の産物になった今日にある意味、時代錯誤ともとれる展開に、演出。まるで30年以上前の東宝作品を観てるようなトリップ感に襲われるものの、コミック原作主流となった日本映画界に対し、「これが映画だ!」と言わんばかりの作り手の意思は高く評価したい。しかも、前評判通り、健さんよろしく背中で語る岡田准一から、やっぱり不幸が似合う安藤サクラまで、その意思に賛同した豪華キャストの面々がスクリーン映えしまくる。しかも、これがサクッと99分というプログラムピクチャー感も評価すべき。ただ、小栗旬激似の子役が成長すると岡田になるというトリックだけは、何とかならなかったものか?