メットガラ ドレスをまとった美術館 (2016):映画短評
メットガラ ドレスをまとった美術館 (2016)ライター2人の平均評価: 3.5
華やかなイベントを支える地味なキュレーターが美しい
有名デザイナーの至高のドレスを身にまとったセレブがレッドカーペットで美を競うMETガラがファッション界最大のイベントなのは誰もが知るところ。そのイベントを追うのだけど、アナ・ウィンターやバズ・ラーマン、リアーナといった豪華な顔ぶれに混じってコツコツ仕事をするキュレーター、アンドリュー・ボルトンが実は主役という監督の視点が効いている。ファッション史専門家にして厳しい審美眼の持ち主ボルトンがいるからこそ華やかなイベントが成功を収めるのであり、人知れぬヒーローが展示物のドレスの裾を直すシーンにものすごく感動。もちろん画面に登場するドレスは限りなく美しいのだけど、ボルトンの仕事ぶりが一番美しいのだ。
アート、ビジネス、ポリティクスが交錯する場所
ストーンズの「アンダーカヴァー・オブ・ザ・ナイト」が流れる中、世界的セレブが集まってくるOPパーティー(晩年のビル・カニンガムも!)。ここに至るまでの地道な日々がすごく興味深い。実質の主役は英国出身のキュレーター、アンドリュー・ボルトン。80年代初頭のニュー・ロマンティクスにルーツを持つ彼が、ウォン・カーウァイを芸術監督に迎えて企画した『鏡の中の中国』展(15年)の舞台裏に迫る。
主題はずばり“西洋と東洋”。美学的に捉えるアンドリューに対し、政治的なコンテクストからつっこみ(外圧)が入る。スタンバーグの『上海特急』『上海ジェスチャー』、女優アンナ・メイ・ウォンなどを参照しての考察も面白い。