あゝ、荒野 後篇 (2017):映画短評
あゝ、荒野 後篇 (2017)ライター2人の平均評価: 3
リングで2人が戦う理由
『ちはやふる』と同様、二部作の罠にハマったか、『前篇』に比べてのパワーダウンは認めざるを得ない。本作も飽きることはないのだが、これだけ時間をかけながら、各エピソードに対して収拾つけることが精一杯なのが伺える。それにより、いちばんの核であるはずの主人公2人がリングで戦わなければいけない理由が、あまりに不明瞭になってしまった。新宿新次はさておき、『前篇』で父親との確執が描かれていたはずのバリカン建二が向かっている道が、新次への「愛」も含めて、見えなすぎる。前作から継続する演者の熱量はもちろんのこと、その後に展開されるボクシングシーンもかなりの迫力で魅せてくれるだけに、とにかくもったいない。
ボクシング映画として特上。全体のバランスはやや不満
映画の中盤とクライマックスというポイントの時間に、ボクシングの試合をじっくり見せるこの後編は、ボクシング映画の王道と言っていいだろう。菅田将暉もヤン・イクチュンも対戦相手役も本気でパンチがめり込む瞬間が映像に収められ、カメラも徹底して接近し、臨場感は半端ではない。
気になったのは前編で複雑に絡み合った人間模様が、この後編では主人公2人に集中したため、前編からの群像ドラマに参加した面々が宙ぶらりん状態になっている点。リングの外で興奮し、絶叫する彼らの姿がやや余計に見えてしまう。ボクシング場面ももっと2人だけの世界にしていたら、さらに寺山修司の原作に近づいた気もする。