望郷 (2017):映画短評
望郷 (2017)田舎で生きることの難しさに向き合った秀作
舞台は瀬戸内海の因島。由緒正しい家柄に生まれたゆえ、島を出ることも許されず夢を諦めた女性と、中学教師として故郷へ久しぶりに戻るも、学校のいじめ問題や地域社会のしがらみに苦悩する男性、それぞれの過去と現在を「家族」や「親子」をキーワードに描きつつ、日本の…いや、恐らく世界中の静かに衰え行く田舎が抱える暗い闇が浮き彫りにされる。
と同時に、自らを育んだ故郷や複雑な想いのある親への深い愛情も滲む。湊かなえ原作ゆえ確かにミステリーの要素はあるものの、むしろ地方で生きることの難しさに向き合った人間ドラマとして秀逸。そして、その中でいかに前へ進んで行くのか。変化の予兆を感じさせるラストも印象深い。
この短評にはネタバレを含んでいます