オレの獲物はビンラディン (2016):映画短評
オレの獲物はビンラディン (2016)ライター2人の平均評価: 2.5
誇大妄想に駆られた愛国者をニコラス・ケイジが怪演!
神の啓示を受けたアメリカの田舎の負け犬オヤジが、愛国者の敵オサマ・ビンラディンを捕らえるためパキスタンへ乗り込む…という、まさかの実話を映画化した作品だ。
といってもこのオッサン、ガチガチの右翼なのかというとそうでもなく、パキスタンでは現地人との異文化交流にうつつを抜かして本来の目的を忘れる始末(笑)。彼にとっての愛国心とは惨めな日常からの単なる現実逃避であり、満たされぬ承認欲求が「憂国の士」という誇大妄想を生み出したとも言えよう。
さながら現代版ドン・キホーテ。『ボラット』の監督にしてはブラック・ジョークも大人しめだが、ニコラス・ケイジのぶっ飛んだ怪演は十分インパクト強烈だ。
ニコケイの魅力、狙い過ぎるのは要注意!?
単なる思いつきでパキスタンに乗り込み、ビンラディンの居場所を探すという、ぶっとんだ男の実話だが、映画にするなら、もうちょい物語に説得力をもたせた方が良かった気も……。この監督は『ボラット』や『ブルーノ』などで、支離滅裂さを危険な楽しさに転換する名手だが、主演にニコラス・ケイジを迎えて、その方向性に迷いが生じたか。
他のスターには真似できないニコケイの武器といえば、本人がマジでやってるのに、ちょっとズレてしまい、おかしくも奇妙な磁場を作り出すところ。今作では最初から笑わせることを狙い過ぎた演技で、文字どおりスベってしまう瞬間が何度もある。ニコケイ映画の信者には、そこが残念であろう。