チェイサー (2017):映画短評
チェイサー (2017)ライター2人の平均評価: 3
元CIAじゃなくても、子供を守る母は強しです。
ちょっと目を離したすきに我が子が誘拐される、親にとって最悪の状況から始まるスリラーだ。ただし主人公カーラは息子を連れ去った車を目撃して、ずっと自分の車で追跡し続ける。『96時間』の父親と同じだが、元CIAとかじゃなく平凡なウェイトレス。それでもやる時はやるわけで、次々と遭遇するピンチを気力と知恵で乗り切る。まさに母は強し! ほぼノーメイクのハル・ベリーは大熱演。息子を救うためにはどんな犠牲も払う覚悟があると伝わるので、見る側は彼女の応援団となる。主な舞台は道路を走るミニバンだが、カーアクションや誘拐犯との対決などで強弱がつくので最後まで飽きさせない。
ひたすら追いかけるだけなのに目が離せない
どこまでもひたすら追いかける。それだけで引っ張っていく構成が大胆。6歳の息子が誘拐犯の車に引っ張り込まれるのを見たシングルマザーが、自分の車で息子と犯人の乗った車を追いかけていく。スマホは落としてしまって持っていない。この状態で考え得るありとあらゆる困難が襲ってくるので、彼女がそれをいったいどのようにして切り抜けるのか、その行動から目が離せない。
ヒロインの一心不乱の追跡の過程で、事件とは無関係な人々に被害が及ぶ場面が多々あり、良識派の観客は眉をしかめるだろうが、そうした状況ゆえに変貌していくヒロインの心理が見もの。その心理の変化をハル・ベリーがほぼ一人芝居で熱演している。