RAW 少女のめざめ (2016):映画短評
RAW 少女のめざめ (2016)ライター2人の平均評価: 4
カニバリズム映画の野蛮なイメージにとらわれるな!
カニバリズム・ホラーにも、こんな切り口があったのか…と思わずにいられない逸品。獣医大学の学生寮に入ったベジタリアンの新入生が先輩たちの“洗礼”を受ける青春ノリから、肉食の芽生えが醸し出す異様な緊張、そして惨劇へ。
意外性はそれだけではなく、ヒロインと姉の葛藤、ヒロインとゲイのルームメイトの関係性の変化など、キャラクター間のドラマも効いている。
主演女優G・マリリエのヴァージニティが宿る個性と、それをそのまま受け止め、リリカルな映像美のなかに昇華した新鋭デュクルノー監督の表現術も見事。一見、野蛮な題材も、こうなると違って見えてくる。とにかく、見るべし!
もしも、そんな欲望に出会ってしまったら
この欲望は、性的欲求といったものの暗喩ではないのではないか。この欲望は周囲には隠さなければならず、自分の存在をも脅かす。その欲求を無視することは出来ないが、それに従えば生きていくのは難しい。主人公の姉はその対処法のひとつを実践してみせるが、主人公には納得がいかない。主人公が出会うのは、そんな欲望だ。
親元を離れて学生寮で暮らし始めた少女が、まったく異なる生活環境に驚きながら、それに順応していく過程に並行して、そんな欲望に出会ってしまった少女の戸惑い、衝撃、そして受容が描かれていく。主人公が、自分の中にその欲望の存在を認めた時の"ああ、これか"という表情が凄まじい。