ガザの美容室 (2015):映画短評
ガザの美容室 (2015)女性の視点からパレスチナ庶民の日常を描く秀作
パレスチナはガザ地区の美容室に集まる女性たち。オシャレや恋愛、世間話に花を咲かせる彼女らの様子は、まさに世界中のどこでも見受けられる光景だが、しかしその言葉の端々から伝わってくるのは「抑圧」だ。誤った宗教の解釈に縛られ、男尊女卑の封建的な価値観に虐げられ、街に蔓延る犯罪や暴力に怯えて暮らす毎日。ここはそんな女性たちが唯一、自分らしく自由でいられる場所なのだ。なにかと政治や紛争などの側面から語られがちなパレスチナ問題だが、本作では女性の視点から庶民の日常をリアルに切り取る。突然起きた戦火の恐怖で美容室が混乱する中、客の一人が叫ぶ「私たちが争ったら、外の男たちと同じになる」という言葉が重い。
この短評にはネタバレを含んでいます