鈴木家の嘘 (2018):映画短評
鈴木家の嘘 (2018)初監督作とは思えない、匠の技のレベル
加瀬亮の長男の衝撃行動を、思わせぶりのカット割りと異様な空気感で描く冒頭から、ただならぬ「巧さ」を実感させる。悲劇の日常にも自然に発生するユーモア。前半の唐突な登場人物の行動が、後になって意味をなす構成の見事さ。そしてもちろん、家族がたがいを思いやる気持ちの温かさと、そのすれ違いの痛々しさ。これがデビュー作で、しかも実体験を基にしながらも、野尻克己監督の冷静な視点に感心する。俳優たちの演技も的確すぎるほど的確。
ただ、あまりにも巧く作ってあるので、笑えるはずの演出が意図的に見えたり、嘘を巡る登場人物それぞれの切なさが本能的な心の揺れを誘わなかったり、全体的な予定調和を感じたのも事実である。
この短評にはネタバレを含んでいます