アウト&アウト (2018):映画短評
アウト&アウト (2018)シリーズ化を希望したい和製フィルムノワールの佳作
漫画家・小説家・映画監督と多彩な才能を持つきうちかずひろ氏が、自らの原作小説を映像化した18年ぶりの長編映画監督作。皮肉屋で不愛想な元ヤクザの私立探偵が、とある依頼をきっかけに有力政治家の暗い過去と隠蔽工作を暴いていくこととなる。これぞまさしく和製フィルムノワール。『カルロス』や『鉄と鉛』の頃のハードなバイオレンス描写は影をひそめ、レイモンド・チャンドラーさながらのクールで渋い世界観に暖かな人情と乾いたユーモアを散りばめながら、裏社会に生きる日陰者や名もなき弱者の悲哀を浮かび上がらせる。苦虫を嚙み潰したような主人公・遠藤憲一と素直で聡明な少女・白鳥玉季のかけ合いも微笑ましい。シリーズ化切望!
この短評にはネタバレを含んでいます