チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛 (2017):映画短評
チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛 (2017)ライター2人の平均評価: 2.5
キャストが豪華なだけに、とっても残念な仕上がり
世界的ベストセラーになった原作の映画化権を巡ってはバトルが起こり、ヒロインに旬な女優が次々と名乗りを上げた話題作。しかし蓋を開けてみたら、人物造形が中途半端だし、不倫とチューリップ投機の関係性が薄くてびっくり。賭けみたいな方法で駆け落ち資金を手に入れようとする段階で結末も見えるし…。キャストで特に惜しいのがC・ヴァルツ演じる豪商で、間抜けにしか見えない上、ユーモアのかけらもない描き方に不満が募った。J・デンチ様も無駄遣いにしか思えず! ただしフェルメールの絵画を思わせる色彩感覚や照明設計は一見の価値あり。また当時のオランダの風景や文化を知ることもでき、本筋以外の側面は楽しめる。
17世紀オランダ絵画を再現する映像美に酔う
映像の陰影の豊穣さ。原作小説の挿絵に17世紀のオランダ絵画が使われていることを踏まえて、映像はそれらの絵画の色調と明度を再現。17世紀、商業が栄えた黄金時代のアムステルダムの雑踏の賑わい。抑制された豪奢。装飾品も衣装も、色彩は地味に抑えて、素材で贅沢を極める。あまり光の入ってこない室内で、衣服の襟にたっぷり使われた繊細なレースの白さが鈍い光を放つ。
撮影はデンマーク出身、「ヒットマンズ・レクイエム」の雨に濡れたブルージュの街路を撮ったアイジル・ブリルド。美術はニール・ジョーダンの吸血鬼映画「ビザンチウム」のサイモン・エリオット。衣装は「ある侯爵夫人の生涯」のマイケル・オコナーだ。