さよならくちびる (2019):映画短評
さよならくちびる (2019)ライター2人の平均評価: 3.5
夢追い人の孤独と傷みを丹念に描く青春音楽ロードムービー
解散を目前にした女性デュオと付き人の若者。お互いを大切に想いながらも、すれ違わざるを得ない3人の心のひだを、ロードムービー形式で描いていく青春映画だ。ものすごくドラマチックな事件が起きるわけでもなければ、激しい愛憎模様が渦巻くわけでもない。いつの時代も変わらぬ若き夢追い人たちの孤独や傷みを、鋭くも繊細な筆致で丹念に拾い上げる。そのさりげなさがとても魅力的。秦基博が書いた主題歌がまたいいんだよね!門脇麦の透明感溢れる歌唱力は『ナミヤ雑貨店の奇蹟』でも既に実証済みだったと思うが、小松菜奈がここまで上手いとは嬉しい驚き。2人の美しいハーモニーもプラスポイントだ。
90年代臭漂う音楽ロードムービー
タバコを吸いまくり、酒に溺れる。大きな事件が起こるわけでもなく、そんな言葉の少ない3人の想いを載せ、淡々と進んでいくロードムービー。どこか90年代臭が漂うあたり、いかにも塩田明彦監督作らしい。「ハルレオ」演じる2人に、おなじみクズ男キャラながら、若干振り回される成田凌もいいが、追っかけ2人組の『私たちのハァハァ』的エピソードも染みる。とはいえ、強引に3人の想いが交錯する恋愛話を絡ませた点や、ラストツアーのハコの規模感や対バン相手など、どこかリアルさに欠ける点は惜しまれる。そんななか、音楽の力に助けられているのは事実であり、あいみょん好きには、それなりに刺さるとみた!