ライ麦畑で出会ったら (2015):映画短評
ライ麦畑で出会ったら (2015)黄昏に綿毛が舞う光景が、ずっと心に残る
黄昏色の光の中を、無数の植物の綿毛が大気中に舞い上がる。その光景の幻想的な美しさ。主人公がこの光景に出会うのは、彼が決意の旅に出た最初の日の夕方のこと。植物本体を離れて遠くに飛んで行こうとする綿毛たちは、これまでいた場所を離れて別のところに行こうとする主人公と同じ。その動きのとりとめなさも、どこに着地するのか分からない危うさも、そして、何かから解き放たれる気持ちよさも同じ。だから、この光景がずっと見る者の心に残る。
「ライ麦畑でつかまえて」に熱中する高校生男子が、舞台化のために行動することで「ライ麦畑」を卒業していく。誰もが通る大人に向かう過程の一歩が、少しほろ苦い。
この短評にはネタバレを含んでいます