めんたいぴりり (2018):映画短評
めんたいぴりり (2018)ライター2人の平均評価: 3.5
明太子のように滋味深き人生ドラマ
”美味しい”は最強だ。
国境もしがらみも軽やかに超える。
それを実証したのが、韓国の惣菜を博多名物にした「ふくや」創業者。
本作は彼の実話を基に、戦後の混乱期を生き抜いた人たちの人情悲喜劇だ。当然随所に戦争の影が漂いピリリと辛い。
とりわけ財政難に陥っていた中洲流に、夫が売上金を寄付したと語る場面。曰く「博多は戦争で引き揚げてきた俺たちを迎えてくれたけん。恩ば返さな」。
いつもなら激怒する妻も笑顔で了承する。ドラマ版にあった釜山シーンは排除されてしまったが、それを補う名シーンだ。
これは本題材に長年向き合ってきた製作陣だからこそ生み出せたもの。
笑わせつつ、セリフ1つ1つの重みが違うのだ。
見終わったその足でデパ地下に直行!
食卓に欠かせない辛子明太子を福岡特産品に育てた「ふくや」創業者の物語とあっては必見だ。これが戦後の中洲か〜と思わせるセットで起こる人情ドラマは徹頭徹尾、昭和! 戦争の哀切を踏まえ、それでも前に進もうと頑張る庶民の活力が清々しく伝わってくる。沖縄戦の記憶や西鉄ライオンズ愛など泣ける要素もたっぷり。富田靖子の落涙は最高に美しい。ドラマの集大成だが、今までの重要なエピソードをセリフや主人公の夢といった形で散りばめているので、唐突感はない。唐突に登場するスケトウダラの妖精も物語に馴染んでいて、吉本新喜劇風? ツヤツヤと輝く辛子明太子の撮り方が素晴らしく、見終わったその足でデパ地下へ直行しました。