決算!忠臣蔵 (2019):映画短評
決算!忠臣蔵 (2019)ライター3人の平均評価: 3.7
金がなくては戦が出来ぬ
昨今の松竹お得意の『武士の家計簿』、『殿、利息でござる!』に続くお金で歴史を再検証するシリーズ。しかも今回は何度も映像化された忠臣蔵だ。もう掘り起こすことも、目新しさもないだろうと思いきや、そういうことか!の連続でさらに歴史に深く触れることができることウケアイ。少なくとも、今や赤穂の観光名所になっている大石内蔵助邸宅跡が何故にあんなに立派か。その謎も解けるだろう。そして討ち入りの日が、あと数ヶ月延びていたら……と歴史の「もしも」を考えずにはいられない。ただ当時の価格を分かりやすくするために字幕多しで、表現方法は他になかったかと思う部分はある。そこは次の課題で。
武家社会にサラリーマン社会が重なります
日本人が大好きな忠臣蔵をかかった費用から読み解き、お笑い要素をたっぷり含ませた楽しい作品に仕上がっている。忠義や武士道の見本として美化された討ち入りが経済面で実行すれすれだった事実を数字入り画面で明かすので、実にわかりやすい。限られた予算でなんとか頑張る姿は、日本中のサラリーマンの共感必至のはず。大石内蔵助が短気な社長の尻拭いをする部長か何かに見えてくる。大石という武士は討ち入り費用の帳簿をしっかり記録していたわけで、その細かさが成功につながったのだなと感心。堤真一はじめ、笑いのつぼを心得た役者陣がいい。
討ち入りはつらいよ
吉本芸人を動員し、珍説を交えた笑える時代劇を作るお祭りノリは、『ゴルフ夜明け前』に近いモノもあるが、そこは『超高速!参勤交代』以降、新感覚時代劇を送り出す松竹とのタッグ。もちろん『マンザイ太閤記』にもなっておらず、いろいろとブッ壊れていく大石内蔵助を演じる堤真一が引っ張り、しっかり安パイ。赤穂藩と石原さとみ演じる浅野内匠頭の妻との温度差、剣豪を演じる関ジャニ・横山の殺陣もなかなかだ。とはいえ、なんだかんだで、いろんな感情が入り混じる討ち入り勘定会議の痛快さに尽きるうえ、W主演である岡村隆史目当てで観てしまうと、いろんな意味で残念に思えてしまうかもしれない。