新宿タイガー (2019):映画短評
新宿タイガー (2019)
ライター2人の平均評価: 3.5
まさかの『HER MOTHER』監督、最新作
同時代に新宿で生まれ育った人間としても、地元のアイコンとして認めざるを得ないが、35年前に「ウソップランド」でのコント「バロム・I」の悪役で登場してたことを考えると、いまさら感強し。当の本人は喋り好きの割には話がまったく面白くなく、自分を好いてくれる女優への対応はDDなドルオタに近い。そのため、外波山文明や田代葉子らの口から語られる、リアル新宿史の方が数倍も価値があり、★おまけ。ゴールデン街で飲んでたときに、理不尽に喧嘩を売られた理由は、本作で少しだけ納得できたが、いちばんの謎は久保新二が”出歯亀”を力説する浅草の喫茶店に貼られた『SPACE BATTLESHIP ヤマト』のポスターだ。
見習いたい
1967年に上京し、72年にあさま山荘事件と交差するように「愛と平和」の使者へと変身! 新宿騒乱からタワレコ新宿店オープン、インスタ映えの時代まで飄々と生き抜いてきた彼を、皆は新宿の象徴だと讃える。だがご本人は「意味」から軽やかに逸脱し、映画も定義づけから絶妙な距離を保つ。なにせこの新宿名物、愛する女優の為なら電車に乗って池袋・原宿・渋谷・浅草にも出かけるのだ!
筆者が最も心打たれたのは、肯定の目でスクリーンを旅し続ける映画ファンとしての純粋な情熱。井口昇監督の証言がそれを補完。「シネマと美女」に耽溺する姿こそ、変わりゆく街の中を、変わらずにマイ・ファンタジーを貫く天使性がよく伝わってくる。