海獣の子供 (2019):映画短評
海獣の子供 (2019)ライター2人の平均評価: 4.5
この色彩と揺らぎにただ身を委ねていたい
特に、水の中。水の中の生き物たち。抽象的な表現の映像よりも、海の中で生き物たちが動く描く映像に持っていかれる。具体的な事物が動いているさまを見ているつもりになっていると、ふと、抽象的な世界に意識が飛ばされてしまっていることに気づかされる。
青のありうる限りのさまざまな色を出現させる色彩。光のありとあらゆる傾きと量とその揺らぎ。海の中、というより抽象的な水の中、ともいうべき空間の巨大さ、果てのなさを描く空間の立体演出。すべてが繊細でいて大きく、伸びやかで、美しい。液体の動きだけが生み出すことのできる、サイケデリックな恍惚。映画のコピー同様、"言葉ではないもの"で大切なことが伝わってくる。
イメージのシャワーに溺れるトリップ体験
『プロメア』がTRIGGERしか描けない世界だとすれば、本作は4℃しか描けない世界といえるほど、制作スタジオの色が明確! 序盤こそ、『遠い海から来たCOO』的ともいえる既視感アリな展開だが、『ドラえもん のび太の恐竜2006』の監督×作画監督コンビが原作者・五十嵐大介の繊細なタッチをアニメに落とし込む執念が異常すぎ! 特に波や泡などの水の作画表現は、ディズニーとは異なる日本特有の匠の技ともいえ、それがクライマックスの海と空、星と星を繋ぐ“誕生祭”で最高潮を迎える。ヒロインとイメージのシャワーに溺れるトリップ体験で号泣するか? ポカーンとなるか? そこを含め、評価は賛否分かれるはず。