アンダー・ユア・ベッド (2019):映画短評
アンダー・ユア・ベッド (2019)ライター2人の平均評価: 3
なにはなくとも高良健吾の存在感
「屋根裏の散歩者」のような変態ミステリーの匂いを感じさせるタイトルだが、種明かしもありながら、かなり詩的で切ないラブストーリー。『恐怖分子』や『愛情萬歳』といった台湾ニューウェーブに対するオマージュもありながら、モノローグだけじゃない観客をダマす“音による仕掛け”も興味深い。そして、なにはなくとも高良健吾の存在感。ストーカーとしてのヤバさはもちろんだが、おむつ装着にスタンガン自滅などの描写も、繊細な芝居によって、失笑ギリギリのラインを攻めてくる。観客をも味方につけてしまう巧さたるや、躍動感溢れた『多十郎殉愛記』とは対照的。31歳にして、完全にベテランの貫禄である。
孤独を拗らせた日陰者の愛と執着と狂気
どこまでも存在感の薄い若者・直人が、大学時代に唯一、自分の名前を憶えてくれた女性・千尋への想いを募らせ、今は結婚している彼女の自宅へこっそり忍び込み、ベッドの下に隠れながら彼女の日常をじっと覗き見する。孤独と不満を拗らせてしまった男の、愛とも執着ともつかない狂気を描くわけだが、面白いのは主人公3人の立ち位置だ。地味で目立たない日陰者として社会の片隅に生きる気弱な直人に対し、千尋の夫は横暴で独善的な社会的成功者。優しすぎて男性的魅力に乏しい直人に千尋は振り向かず、自信に溢れたエリートの夫と結ばれDVに苦しむ。さながら男社会における不幸な人間関係の縮図。そういう視点で見ると非常に興味深い。