ある町の高い煙突 (2019):映画短評
ある町の高い煙突 (2019)100年前の公害問題に福島の今を重ね合わせる
あの『オールナイトロング』シリーズの松村克弥監督による、まこと折り目正しくも格調高い歴史ドラマ。明治時代末期に起きた日立鉱山の煙害問題を題材に、貧しい農民たちの生活を守るため大企業を相手に戦った名家の御曹司と、企業の社会的責任を果たすべく国家や株主の圧力に抗った資本家の崇高な信念が描かれる。福島第一原発事故の問題を想起させる点は多い。恐らく両者を重ね合わせる意図はあったはずだ。富国強兵のため産業発展を推進し、弱者を容赦なく切り捨てる政府。いつの時代も国家は理不尽だ。しかし、この時代には「庶民の幸福なくして国家の繁栄なし」と国策に抵抗する無私の人々がいた。果たして、今の日本はどうだろうか?
この短評にはネタバレを含んでいます