ある女優の不在 (2018):映画短評
ある女優の不在 (2018)見終わると同時に、傍観する自分自身を諌めました
国に規制されながらも果敢に映画製作を続けるパナヒ監督の新作は、イランにおける女性の地位をめぐる問題に焦点を当てる。政治色を極力薄め、ほのぼのとしたユーモアを交えるパナヒ監督らしい展開で、「これ、大筋に関係あるの?」と思わせる伏線を見事に集約する。うまい! 自殺少女の安否を探る監督と人気女優の謎は案外早く解けるが、物語はそこから映画の核心にぐいっと舵を切る。テヘランである程度の自由を謳歌する二人の戸惑いと観客のそれがシンクロする仕組み。冒頭に登場する少女の率直な疑問と周囲の無理解から傍観者でいることの恐ろしさが伝わる。田舎の素朴な人々の政治への無関心ぶりも含め、自戒することが多い作品だった。
この短評にはネタバレを含んでいます