未成年 (2019)：映画短評

不倫で壊れていく二つの家族と、不倫関係にある男女それぞれの娘の成長を、丹念な心理描写で描いた秀作。苦くて厳しい現実に直面した少女が心を折ることなく、大人が失った潔癖さや道徳観に沿った行動を取る姿に心が洗われる。子どもっぽいと思う部分もあるが、本当に清々しい。女子高生役の女優は心境の微妙な変化をしっかりと演じていて、思わず「そうだよね」とうなずく好演。特に生まれてきた弟を必死で守ろうとするユナ役のパク・セジンの目力が印象的で、将来が楽しみ。不倫がバレて逃げまくる夫（恋人）をユーモラスに演じたキム・ユンソクの監督デビュー作で、ダメ男だけど嫌いになれない演出にも納得。韓国エンタメ界は奥が深いわ。

演出や編集に口を出すことでも知られる、俳優キム・ユンソクの監督デビュー作だが、演劇フェスで観た戯曲に惚れこんでの映画化だけに、かなりの気合いが伝わってくる。大人になり切れない親と大人になるため背伸びする子という“未成年たち”を描くなか、親の不倫に巻き込まれる子を女子高生2人に脚色したことで、ガールズムービーとしての要素も強まる。また、主人公が父親の不倫を知るという映画的なシーンを省いたうえでの大胆なファーストカットや、彼らにとって転機となる雪降る夜のシーンも印象的だ。かなりヘヴィな題材ながら、ユンソクが教師役を演じた『ワンドゥギ』にも似た感触のヒューマン・ドラマといえる。