パピチャ 未来へのランウェイ (2019):映画短評
パピチャ 未来へのランウェイ (2019)ライター2人の平均評価: 4
どれだけ踏みつけられても夢を諦めない勇敢な女性たち
イスラム過激派と政府の内紛に揺れた’90年代のアルジェリアで、自由を愛し青春を謳歌する若い女子大生たちが、原理主義に感化された保守勢力によって夢や希望を次々と奪われていく。宗教だの伝統だのしきたりだのを理由に、決定権を持つ男たちが女性のあるべき姿や幸せの形を勝手に制限し、彼らに追随する女性たちまでもが同性の権利を抑圧する。反発する者に待ち受けるのは容赦ない暴力だ。それでも頑なに抵抗を続け、祖国に踏みとどまって社会を変えていこうとするヒロインの決意と勇気に胸が熱くなる。今もなお支配層の大半を男性が占め、前時代的な男尊女卑が社会の隅々に残る日本人にとっても、他人事に思えない点は少なくない。
立ち上がる女子大生に勇気をもらえる
内戦下のアルジェリアに生きる女子大生の苦悩がわかり、イスラム原理主義者による女性弾圧の恐怖が伝わる。宗教を曲解した「女はかくあるべし」という考えを押し付けられ、死と背中合わせの青春とは!? 性欲抑制剤入り牛乳を飲ませられるなんて拷問だ。そんな状況で夢に向かって疾走するヒロインの覚悟が心に響く。彼女流の抵抗だ。日本では#MeToo運動が拡散しないが、実際はさまざまな局面で生き辛さを感じている女性は多いはず。そして無自覚に俺様目線で生きている男性もな。男女ともに意識を変えることが、あるがままの自分でいられる未来につながると思わせる作品だ。ヒロインを演じたL・クードリの力強い眼差しが印象的だ。