うみべの女の子 (2021):映画短評
うみべの女の子 (2021)ライター2人の平均評価: 3.5
思春期の矛盾した恋愛感情と性の衝動が生々しい
満たされぬ承認欲求を持て余して周囲を振り回してしまう少女と、深いトラウマを抱えて死の概念に取り憑かれた少年。まだ愛情の意味もよく分かっていない思春期の中学生たちが、興味本位からセックスの快楽に身を任せていくうち、自分を突き動かす得体の知れない衝動と向き合っていくことになる。肉体の成長に対して心の成長が伴っていない未熟な男女が、お互いを必要としながらも衝突して傷つけ合い、やがてその矛盾と葛藤の中から自分なりの真実を見出していく物語。キラキラでもない、爽やかでもない、どこまでも痛々しい青春模様は、だからこそどこかで身に覚えのある残酷なリアリティを併せ持つ。
原作リスペクトによる再現度の高さ
『ソラニン』以来となる浅野いにお原作の映画化だが、独特なセリフやはっぴいえんどの「風をあつめて」を含む、原作リスペクトによる再現度の高さ、ロケーションや小道具のこだわりに至るまで、ウエダアツシ監督渾身の一作といえるだろう。また、女優の感情の引き出し演出を得意とするウエダ監督だけに、コロコロと表情を変えていく石川瑠華に、メガネっ子もハマる中田青渚などは言うまでもないが、なんといっても磯辺を演じる青木柚の厨二病芝居がムカつくほどスゴい。物語の軸となる性愛描写にもしっかり向き合っており、それにより思春期特有の痛々しさや残酷さが一層にじみ出ている。