ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ (2020):映画短評
ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ (2020)ライター2人の平均評価: 3
いろんな意味で王道のサスペンスを、できるだけ暗い部屋でどうぞ
原作自体は別物だが、外出できない主人公が向かいの部屋の事件を目撃するという、明らかに『裏窓』のリメイク的な楽しみを提供。『サイコ』『白い恐怖』のオマージュ/引用もなされ、さながら“ヒッチコック祭”。映画のセリフを暗記してるなど主人公の私生活の細部描写が味わい深いし、自分の主張を周囲が信じてくれず、現実と幻覚の混沌したムードも、わかっちゃいるがドキドキ感上昇の巧みさ。全体の雰囲気と突然の衝撃を満喫すべく、できるだけ周囲の音や光をシャットアウトした環境で観てほしい。
G・オールドマン、J・ムーアといった本来、芸達者たちの過剰さと、終盤の展開を許容できるかどうかで、作品全体の評価は分かれるかと。
主人公の不安定な意識が映像で描写されていく
主人公が望遠鏡で覗いていた家で起きた殺人を目撃してしまう、というのはよくあるパターンだが、本作は主人公がアルコールと向精神薬の依存症で広場恐怖症、精神面で問題を抱えているところがユニーク。ミステリでいう"信頼できない語り手"のジャンルなのだが、さらに一捻りあり、彼女は精神分析医で自分の状態を知っているため、自分自身を信用することができない。ヒロインのそうした精神状態を、セリフではなく映像で描写するのが本作の試み。彼女が混濁した意識で見る世界が、いつも彼女が見ているモノクロの古風なフィルム・ノワール映画と混じり合う。彼女が無意識に押さえつけている記憶が、映像としてふと立ち上ってくる。