SEOBOK/ソボク (2021):映画短評
SEOBOK/ソボク (2021)ライター2人の平均評価: 4
人はなぜ生きようとするのか、なぜ死を恐れるのか
韓国の国家プロジェクトで生まれた人類初のクローン人間ソボク。人間に永遠の命を与えるために創り出された彼は、同時に人間に危害を加え得る超能力も備える。そんなソボクの護衛を任された病身の秘密工作員ギボンが、巨大な陰謀から彼を守るべく戦う。人はなぜ生まれて、なぜ生きようとするのか。そして、なぜ死を恐れるのか。生と死の意味も知らぬ無垢なソボクと、死の現実に怯えて生に執着するギボンの逃避行を通じて、人類永遠のテーマが考察されていく。ストーリー自体はデ・パルマ版『フューリー』や『炎の少女チャーリー』の亜流だが、主人公2人の感情のひだを丁寧に描きながらエモーショナルに盛り上げていく脚本はとても巧い。
繰り返される水のイメージが魅了する
水のイメージが連鎖する。海に浮かぶ船舶の研究室。そこで育てられたクローンの少年が、出ることを許されない部屋で1日中眺めている、岸辺に打ち寄せる波のホログラム。クローンの逃避行に同行する男の忘れたい過去の出来事にも、水が押し寄せる。そして、クローンが奇妙な力を使って描こうとする風景の中で、海の水が、現実にはあり得ない不思議な動きをする。それらの水の透明さ、滑らかさ、冷たさが、ずっと物語の根底を流れている。それが青白い光に満ちた実験室で育ったクローン少年の清潔さ、無垢さと響き合う。メインのストーリーだけ見ると定番的な物語だが、繰り返される水のイメージが、この映画に独自の不思議な魅力を与えている。