アウシュヴィッツ・レポート (2020):映画短評
アウシュヴィッツ・レポート (2020)ライター2人の平均評価: 3.5
あなたは凡庸な悪人か、それとも勇敢な善人か
厳戒態勢のアウシュビッツ=ビルケナウ収容所を命がけで脱走し、ホロコーストの恐るべき実態を初めて世界に訴えた2人のユダヤ人を題材にした実話。その過酷極まりない逃避行を軸としながら、ここでは2つの全く異なる人々が描かれる。ユダヤ人を自分と同じ血の通った人間だとは見なさず、体制の意に従って彼らの生命も権利も平気で軽んじる凡庸で冷酷な人々。そして、自らの良心に突き動かされて主人公たちに手を差し伸べ、危険も顧みず彼らの逃亡を手助けする勇敢な善意の人々。再び世界中で差別と憎悪が蔓延する殺伐とした昨今、果たしてあなたはそのどちらだろうか?と問いかけられているような気がする。
命懸けで同胞を救った人々の忍耐と勇気に敬服する
終戦から76年がたつが、語り継がれる戦争秘話の重要性を実感する。機械的にユダヤ人を殺害していた収容所の実態を赤十字に報告したスロバキア系ユダヤ人青年アルフレートとヴァルターの実話は、勇敢な青年たちのスリリングな脱走劇はもちろん、収容所に残った同胞が味わった苦悩も詳細に描写。前者が善意の人に出会う一方、後者は激怒したナチスの兵士から残酷極まりない仕打ちを受ける。常軌を逸するほどに残酷になれる人間の本性が恐ろしい。まさに戦争が人間性を破壊する証拠だろう。収容所という名の地獄に耐えながら自身の命を賭して同胞を救った人々の勇気にただもう敬服する。