梅切らぬバカ (2021):映画短評
梅切らぬバカ (2021)視点を変えて、他人と向き合った先にあるものは?
自閉症の息子と年老いた母親の物語は、人間が持つ不寛容や差別意識を浮かび上がらせるものの、柔らかな着地点に落ち着く。いちばん感動したのが自閉症者の描写だ。主人公の忠さんはマイ・ルーティンを守って生活し、独自のコミュニケーション術を使う。塚地武雅が真に迫る演技で、子どものまま中年になったような忠さんを血肉の通った存在にしている。加賀まりこが演じる、明るく振る舞いながらも息子の将来を案じる母には泣かされた。忠さんと道にはみ出した梅の木を徐々に受け入れる隣人は、物事の見方や視点を変えて他人と向き合うことの大事さを教えてくれる。色々学べるけれど、まったく説教臭くないのもいい。
この短評にはネタバレを含んでいます