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ミス・マルクス (2020):映画短評

ミス・マルクス (2020)

2021年9月4日公開 107分

ミス・マルクス
(C) 2020 Vivo film / Tarantula Photo by Emanuela Scarpa
なかざわひでゆき

時代も思想信条も越えた女性の怒りと哀しみ

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 共産主義の父カール・マルクスが最も愛した末娘エリノアの半生が描かれる。父親の遺志を継いで労働者の権利向上や男女平等などのために闘ったエリノアは、社会主義者の劇作家エイヴリングと生まれて初めて恋に落ちるのだが、しかし崇高な理想を雄弁に語る彼の素顔は、浪費家で生活能力のない女たらしの嘘つきだった。女性の権利に理解があるはずのリベラル男性が、実は無自覚なだけで保守派と大して変わらないミソジニストであるケースは今も存在する。父親を支えるため青春時代を捧げ、今また同志と信じる男性のため尽くすエリノアが、結局のところ彼らが女性を対等の存在と見做していなかったことに気付いた時の絶望感に胸が痛む。

この短評にはネタバレを含んでいます
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